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大型コンピューターであるメインフレームを刷新したミニコンに陰りが見え始めた頃は胎動していたワークステーションが産卵を始めた過渡期であり、サン・マイクロシステムズ(Sun Microsystems)というガレージ・カンパニーの製品が急速に台頭していました。コンピューターのことを露ほども知らない筆者がこの製品を取り扱う企業に入社したのはこの頃でした。
学生時代に半ば強制的に購入させられたシャープの関数電卓(PC-1401、BASICも使えます。レジのレシートみたいな専用プリンタも買いました)と未使用の5インチのフロッピー・ディスクを汗ばんだ両手に握り締めていました。興味はあった(過去記事「スタートレック」を参照)のですが、コンピューターの知識は皆無だったのです。
会社で最初に出遭ったコンピューターはSun 3/60(コード名はFerrari)。CPUにモトローラ(Motorola MC68020 + MC68881 Co-Processor)のチップが搭載されたVMEバス(VMEbus)のデスクトップ・マシンです。主記憶装置(メインメモリ)は24MB、3つボタンのマウスと肉厚のキーボードが付いていました。
同じ部屋にはインテルチップを搭載したPC/AT互換のSun386i(Intel 80386 + 80387 FPU, Memory 16MB)という変り種の横に、重鎮Sun 2/50(MC68010 + VMEbus, Memory 7MB)が腰を据えており、まるで黒電話での受話器コードのように螺旋で伸びるケーブル(カールコード)で重厚なキーボードに繋がっていました。その奥にはアポロ・コンピュータ(Apollo, Domain/OS)が両脇に2つと正面に1つの合計3つモニターを配して、まるで牢名主の如く鎮座していました。
ワング(Wang VS)、DEC(VAX/VMS)、カルマ(Calma)やストラタス(Stratus)は別の部屋にありましたし、他にも有名所としてタンデム(Tandem)、HP(HP 9000/300, HP Apollo9000/400、PA-RISCのHP 9000/700)、シリコングラフィックス(Silicon Graphics International, IRIS POWER, Indigo, Indy, O2)、ソニー(SONY NEWS)。エンジニアリング・ワークステーション(Engineering WorkStation, EWS)と呼ばれた群雄割拠の戦国時代でした。
程なくしてトレーニングルームには前年に発表されたSPARCstation 1(Sun 4/60)がお目見えしました。Sun Microsystemsが自社開発したRISCプロセッサであるSPARC(Scalable Processor ARChitecture)をピザボックス(Pizzabox, 宅配ピザの箱)と呼ばれたデスクトップ型の筐体に搭載したマシンです。
スマートなキーボードと光学マウスを従えた外観に加えて、中身もSPARCサポートするため新設計のSBus(SPARC用に設計した外部拡張用バス、内部バスにはMBusを採用)とMMU(Memory Management Unit)を擁して新世代の高速ワークステーションを体現していました。
SPARCstation 1は、同時期出荷の廉価版Sun 3/80(MC68030+MC68882)と同じ外観にも拘らずSPARCstation 1だけが光り輝いてみえました。SS1と見比べると何故だかSun 3がくすんで見えたのです。彼女のSPARC(Spark、煌き)という名前に由来したのかもしれませんが彼女に惹かれていた所為なのでしょう、きっと。
事務所の裏に(のちに師匠となる)隣の上長が常時篭っている小部屋(サーバー室)があり、そこにはSun 4/390が大音量の稼動音と業務用冷蔵庫ほどの空間占有率が圧倒的な存在感を示していました。Sun 4/390も同じくSPARCチップが搭載されたVMEbusのシステムでした。
このSPARC搭載サーバーマシンのシリアルポートには複数のCIT-224ターミナル(オレンジの文字で表示する伊藤忠エレクトロニクス社製のDEC VT100互換ダム端末)を教育受講者用途に繋げていました。師匠は「Sun 1」からサンマイクロに関ってきた叩上げのエンジニアです。
師匠はサンの黎明期に創業者の一人スコット・マクネリ(Scott McNealy)や天才ビル・ジョイ(Bill Joy)達と昼食と供にしたことを誇らしげに語られていました。
SPARCstation 1(SS1)登場の同年には改良を加えたSPARCstation 1+(Sun 4/65)、翌年には大幅パワーアップを遂げたSPARCstation 2(Sun 4/75、SS2)が市場を席巻し、ピザボックスのSS2はWS(workstation)の定番になりました。
ジオン軍で喩えれば、MS(MOBILE SUIT)の定番と言えばザクですから、SS2がザク(ザクII)でSS1が旧ザクだと思って頂ければ妥当かもしれません。後年、勉強のために秋葉原で中古のSS2を購入し自宅に設置したつわものの同僚が居たのを思い出しました。もしかしたら少しでも速くするために赤く塗装していたのかもと妄想してしまいます。
SS2登場後、間髪入れずにSPARCstationシリーズの廉価版バリエーションが提供されピザボックスより小さいランチボックス(Lunchbox, お弁当箱)筐体のSPARCstation IPC(Sun 4/40)とモニター一体型省スペースのSPARCstation SLC(Sun 4/20, Super Low Cost)です。
モニターの裏にマザーボードが入っているSLCは当時画期的でしたがモニターがグレースケール(16色)でメモリは最大16MB、拡張性を排除した省スペース設計のためSIMM(Single In-line Memory Module)拡張スロットの空きがなくいつもメモリ不足でした。彼女達はすぐにアップグレードされてSPARCstation IPX(Sun 4/50)とSPARCstation ELC(Sun 4/25, Extra Low Cost)となります。
筆者は自分専用マシンとして先ずSLCが与えられ、ELCに変更しました。ELCでは16MBのSIMMが挿せるようになり最大で64MB搭載できたのですが、安価な8MBのSIMMを4枚差した32MB構成に、格安で入手したCTCマーク入りのランチボックス筐体のSCSI(Small Computer System Interface)ハードディスク容量100MBをおせちの重箱のように何段にも重ねて使っていました。
SCSIですから(ホスト・アダプタを除くと)最大の7個のデバイスを数珠繋ぎできるので合計700MBです。何せSLC/ELCには、内臓ハードディスクが無かったのです(OpenBoot PROMからネットワーク・ブートしてディスクレス・クライアントとして使用するという方法もありました)。
SS2登場の翌年にはSun Microsystemsが創業10周年を迎え、満を持してSPARCstation 10(S10)がリリースされました。10周年が故に「2」から一足飛びに「10」という番号が与えられたSPARCstation 10はSuperSPARCを2つ搭載可能なマルチプロセッサマシンとして登場し新たな時代を切り開く閃光となりました(SuperSPARC互換のhyperSPARC搭載版も登場)。
アーキテクチャはマルチプロセッサを意味するsun4mです。
SS10が登場したアニバーサリーイヤーに開催されたイベント(UNIX Fair或いはSPARC/UNIX COSMOSのどちらかは失念しました)で出展した際に、SPARCstation 10のピザボックスを膝に抱えたキリンのマスコットを頂きました。SUNのCRTモニターの上にちょこんと乗せるソフビのマスコットです。何故、キリンなのかは「遠くを見通すため」だったと伺った記憶があります。今も家のどこかにある筈です。
SPARCstation 10以降もSPARCstation Classic, LX, Voyager, 5, 20, 4と矢継ぎ早にSPARCシリーズのワークステーションが発売されました。マイクロプロセッサはSuperSPARCの後継はUltraSPARCと命名され新たなSPARCファミリーへと血脈相承されました。
弊社カスタマ・エンジニア(現在エディケーション・サービス所属)が保守サービスの際に顧客先の工場でラインをコントロールしている油まみれで茶色に変色したSun Ultra 5 workstationを修理してきた話を伺いました。空調が効いた涼しい部屋だけでなく様々な場所と用途で使われていたのだと実感させられます。
SPARCstationファミリー登場が周囲に及ぼした影響や貢献は、UNIX誕生の源/出生地/ゆりかごである名機DEC PDP-7やPDP-11に匹敵するといっても過言ではないように思います。
そして現在、2013年オラクルは最新のSPARCであるマルチコアのSPARC T5/M5を発表。SPARC T5は16コアのマルチコアプロセッサで(コアあたり8スレッド)最大128スレッドの同時処理が可能です。このSPARC T5を8個搭載するマルチプロセッサマシンがSPARC T5-8で合計(8 x 16 x 8 = )1024スレッドという並列処理が可能、搭載メモリは4TBのハイエンドマシンです。SPARC M5は6コアとしL3キャッシュ容量が6倍、最大ソケット数が4倍の32個、つまりSPARC M5-32は32プロセッサで最大(8 x 6 x 32 = )1536スレッドの並列処理、最大搭載メモリは32TBの最上位機種を構成可能です。更に2014年にはSPARC M6登場とも発表しています。
これら新世代SPARC T5/M5/M6に於いてもCMOS製造技術が採用されているとの事ですが、CMOSで想起されるのは、入社して配属された事業会社(旧CTCシステムズ、コアSE部隊と教育サービス)の社長がバイポーラトランジスタ(Bipolar transistor)から新技術のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)テクノロジーを適用することが及ぼす飛躍的な技術革新とその影響について熱く語って居られましたが、チンプンカンプンでした。現在も正しく理解しているとは言い難いですが、革新的技術は長く使われるのだということは経過した年月が証明してくれました。CMOSのみならずSPARCも同様です。
SPARCが誕生してから既に四半世紀が過ぎました。三年先は遠い未来であるこの世界で長きに亘ってエッジロケーションに存在し続けるのは驚嘆に値します。現在のOracle SPARCのロードマップを見ると右側の余白に"Oracle Application Accelerators"書かれており将来的には"Software in Silicon"を見据えたデータベースのクエリまでSPARC自体に組み込まれる可能性もあります。ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)と相俟って選択肢の一つになるのかもしれません。まだまだ輝きを放ち続けていくことでしょう。
Sun OSの話をするつもりで書き始めたので、この話題がもう少しだけ続くかもしれません。
次回もお楽しみに。
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