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情報教育というとプログラミングや情報リテラシーをすぐに思い浮かべます。プログラミングにもいろいろな言語がありますから、どの言語か教育に向いているかと言った議論にもなります。もちろんこうしたことは重要ですが、もっと自由な発想で情報教育を考えても良いのではないでしょうか。今回は私の教育に関する経験を1つ紹介し、自由に発想を広げられる情報教育というテーマで考えてみます。
私は積極的に旅行をしたいと思わないので、初めて海外へ行ったのは2000年代のはじめ頃、米国ロサンゼルスで開催された国際学会へ出席するためでした。学会へは同じ博士課程の同僚と2人で参加しましたが、食事のとき以外はそれぞれ別々に行動していたような気がします。私はせっかくロサンゼルスまで来たので、MOCAの愛称で親しまれるロサンゼルス現代美術館へ1人で行ってみることにしました。そこで生涯忘れることのできない印象的な場面に遭遇します。
美術館へ行ったのは平日の昼間だったので、先生数人に引率された小学校低学年くらいの子供たち10人ほどの団体がいました。先生は、1辺が4〜5メートルくらいありそうな壁一面の青い抽象画の前に生徒たちを座らせます。絵の解説がはじまるならちょっと盗み聞きしようと思い、私もそばで立ち止まりました。すると先生は子供たちに「この絵を見てどんなことを思う?」と聞きます。すると子供たちは一斉に発言し「青い」「空みたい」「海にみえる」と自由に発言し、そのたびに先生が「すばらしい」「そう、その通り」「もちろん、それもいい」などと全肯定し子供たちの発想はさらに広がっていきます。さすがにすべて聞き取れませんでしたし、詳細を忘れてしまった部分もありますが、これが米国か!と度肝を抜かれたことは今も鮮明に記憶しています。
2021年の3月に大学入試センターが、20205年1月に実施する共通テストに「情報」を導入すると発表しました。この科目はプログラミングや情報リテラシー、データサイエンスに必要な統計処理などを盛り込んだもので、国語や数学などと並ぶ基礎科目となるようです。
これからの時代に「情報」に関する知識が必要なことに疑いの余地はありません。共通テストのような形式で学力を測定しようと思うと、どうしても型にはまった出題形式になってしまうことも仕方ないでしょう。ただ、これを機会に学校での教育が変わると思うので、そこに自由な発想が入るとよいのではないかと思っています。それでは、コンピュータと教育における自由な発想とはどのようなものがあるでしょうか?プログラミングを学ぶ前、誰でも参加できる課題を1つ思いつきました。
半年や1年の課程でコンピュータを作るのはどうでしょう。コンピュータを作ると言っても、秋葉原でCPUとメモリとマザーボードを買ってくるのではありません。計算する機械を作るのです。8と3を足すと11になる。これを機械でやるにはどうしたらいいか。正解は1つではないでしょう。いろいろな仕組みの機械が考えられるはずです。歴史的には機械式計算機と呼ばれる分野でさまざまな成果がありますが、今となっては何の役にも立たない代物ですから、先人の発明など無視しましょう。ゼロから自由な発想でチャレンジすることに意味があると思います。どうしたら自動的に計算ができるのか?をとことん考えるのです。
最初の機械は手動で動くものになるでしょう。動力を使うと計算が速くなるかもしれません。電気を使ったら何ができるようになるかまで考えると、現代の計算機に近づいてきそうです。いずれにしてもたいした計算はできないでしょうから、手元のスマートフォンの偉大さに気がつくきっかけにもなるはずです。ただ、重要なことは自由な発想です。何か新しい方法をひねり出すところに大きな意味があり、これがコンピュータへの興味や深い理解へつながるのではないかと思っています。課程としては、高校生くらいを対象とするのがよさそうです。
プログラミング言語を自由に操れると、コンピュータの中で思い通りに世界を作り出せます。これがソフトウェアの威力ですが、いかんせんプログラム言語の習得にはそれなりの労力を必要とします。そこで今回はプログラミング以前、コンピュータを作るというところに着目してみました。これなら誰でも自由に考えることができますので、企業研修などで実施してみるのも面白いかもしれません。
教育は世界の未来を左右します。また、情報教育はまだ始まったばかりです。これからもこのコラムでは情報教育について、私なりの自由な発想で考え続けていきたいと思っています。
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