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第56回 ベビーメタル 2016年5月

「ベビーメタル」(BABYMETAL) の 2ndアルバム "Metal Resistance"(メタル・レジスタンス)が全英チャート(アルバムチャート)にランクインし日本のアーティストでは歴代最高の15位の快挙を果たしました。このニュースは夕方のテレビ番組やカラー写真付きで掲載された新聞記事として報道されました。

これに先んじてアルバム "Metal Resistance" からの先行シングルカット曲 "KARATE"「カラテ(空手)」は、英国(UK)と米国(US)の iTunes メタル・チャートでナンバー・ワン(第一位)に輝きました。世界中のチャートを席巻したのです。

この快挙は、九ちゃん(坂本九)の "SUKIYAKI" (上を向いて歩こう)以来の出来事と言えるのかもしれません。六八九トリオ(永六輔、中村八大、坂本九)の手による「上を向いて歩こう」"SUKIYAKI"(すきやき) は全米ビルボード第一位という前人未踏の偉業でありました(1961年リリース、1963年1位獲得)。それから時間が経ちましたが、それに続くような世界にアピールできる逸材がやっと登場したのです。

この「ベビーメタル」(BABYMETAL)は何者なのか?ですが、「アイドルとメタルの融合」(フュージョン)を謳っており、それを意図として構成されたユニットです。つまりは下記の公式が成り立ちます。

「アイドル」"Baby (Japanese Idol)" +「ヘビーメタル(ヘヴィメタル)」"Heavy Metal" = 「ベビーメタル」(BABYMETAL)

字面通り「ヘビーメタル」と「ベビーメタル」が掛かって(語呂合わせして)いるのは表記通りであり、「かわいいメタル」を目指しているのだそうです。こういった類(たぐい)の言葉はルイス・キャロル (Lewis Carroll) が小説の中で好んで使っていて「鏡の国のアリス」(Through the Looking-Glass, and What Alice Found There) の話中で命名した旅行鞄 "portmanteau" に准えて「かばん語(混成語)」と呼ばれるのだそうです。

この、「かばん語(公式)」が何かに似ているなと気づきました、"DevOps" です。

「開発」"Development" +「運用」"Operations" = 「デブオプス」(DevOps)

"DevOps" は、開発者と運用者が協力してシステム構築の改善を継続的に繰り返し行っていくという趣旨を謳った概念を指す「かばん語」なのです。

DevOpsの実現に向けては色々な課題が山積されていますが、緊密な協力体制を目指そうとするのは自然な成り行きなのでしょう。そもそも同じシステムを担当するのに、開発者はソフトウェア開発が終了したらおしまいで「出来たから後は宜しく。」となってしまって、運用者はソフトウェア実装の中身をちょっとは知ろうという気すらもなくて、「指示通り動けばいいんでしょ?」というスタンスで両者が対岸に乖離してしまっている状況では、刻々とユーザの要求や好みが変化するようなシステムを改訂、改善しようが無いのは無論の事、正常に動いているものの極端に遅くなるような問題や何かの拍子で不具合が出てサービスを継続出来なくなってしまったら手の施しようがないのは明白です。

解決策としては相互理解と緊密なコミュニケーションが必要不可欠なのですが、先のように目前に置かれた仕事のゴールが異なるために開発側と運用側で乖離してしまっている現実は、双方が属している環境や構成する集団の性格が相容れないこと、つまりは基礎を成す慣習(行動原理)や知識(思考回路)が全く異なる事が原因の根底にあり、この溝を埋めることは容易なことではないのです。

では、一人で開発(プログラム)も運用(オペレーション)もやってしまったらどうなのでしょうか?

予想される結論としては、プログラマがインフラを任されて途方に暮れることになりかねません。その逆もしかりです。克服には広範な分野をカバーするための場面に応じた知識と能力が必要になるでしょうし、複数のタスクを並列して工程を熟すためには分身の術でも使えない限り、単独遂行では物理的な時間と空間が限られてしまいす。一人でそれらを担うのには無理があるかもしれません。

任天堂ファミコン(ファミリーコンピュータ、"Nintendo Entertainment System")のロールプレイングゲーム (RPG)のドラクエ(ドラゴンクエスト、 "Dragon Warrior")で「転職システム」が登場したのを覚えていますか? FF (ファイナルファンタジー)でのジョブチェンジと同じ機能です。ドラクエIII の頃からだったように記憶していますが、神殿に行くとプレイヤーの職業を変えられる仕組みがありました。

この仕組みはある程度のスキルを得ると「職業」を変えることが出来るもので、例えば「まほうつかい(魔法使い)」や「そうりょ(僧侶)」が「せんし(戦士)」や「ぶとうか(武闘家)」などの全く異なる属性の職業になれるのです。これは覚えた「まほう(魔法)」がそのままに体力や戦闘力などもステータスがアップできる利点がある反面、ステータスが半分になりレベルが1(初期状態)に戻ってしまうデメリットもありました。

「魔法使い(もしくは僧侶)」が「プログラマ」、「戦士(もしくは武闘家)」が「インフラエンジニア」と置き換えてみると、同じ構図でなんだか似ているような気がします。

ドラクエIIIではこのように双方の能力を手にいれることが可能なのですが、それでも最初が「魔法使い(プログラマ)」から始めて「戦士(インフラエンジニア)」の経験を積んだのか、または、その逆で「戦士(インフラエンジニア)」を経て「魔法使い(プログラマ)」の能力を得たのか、その経緯に因って基礎能力や経験値の上昇率が異なりますので、「剣(拳)」で問題を切り裂き「回復魔法」で補助を行うか、問題を「攻撃魔法(遠隔操作)」して至近距離での接近戦も可能な「体力」があるのか、といった様にどちらかに偏って些少なりとも得手不得手が異なる事でしょう。

しかも、どちらを選んだとしても異なる属性の両方を得るためには修練の場面と時間が必要であり、ゲーム終盤になってからになるでしょう。異なる性質を持つ熟練者に至る道には相応の時間が必要となるのです。

もう一つの懸念点として「二兎を追う者は一兎をも得ず」や「一芸は道に通ずる」といった訓戒があります。この訓戒はドラクエでもそうであるように、まずは一定の技量を得てからでないと職業を変えられないのです。それに「ステータスが半分」や「ずぶの素人(アマチュア、初心者)」といった逆境を楽しめる人でなければ、「神殿」に行こうとはしないでしょう。楽観的な性格と向こう見ずな勇気が必要なのです。

「賢者(デブオプス)」になるためには対価(時間)と資質(性格)が必要であり、その成否は個に委ねられるものですが、周囲(組織)の理解と協力が無ければ成し得る事が出来ません。

不可能であるとは明言しませんが、北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手のように稀有な存在であり、それこそは特異点(シンギュラリティ、"singularity")であろうことは間違いないのです。

DevOpsの実現を果たすための現実解としては、それぞれの分野で傑出し熟練した二者以上のプレイヤーが必要であり、その両者が相手を思いやり歩み寄る混成チームが必要なのです。そのために相互理解が必要不可欠な環境である「広場」を創出し、その場を周囲が盛り上げる演出にあるのではと考え始めています。またこれを援護するための道具(ソフトウェア)も徐々に揃い始めています。

継続的な改善を行えることがシステムの柔軟性を高めることに繋がり、必要とする機能に迅速に対応することができるのがDevOpsの意図であり真髄なのではと考えます。

 

先日、冷蔵庫が突然壊れました。

抹茶アイスを食べようと箱から取り出したら、ビニール袋の中で粘性のある緑の液体と木の棒に分離していたので気が付いた次第です。機械の故障というものはその予兆に気が付かなければ、唐突に壊れたと認識してしまうのです。

冷蔵庫が冷えなくなってしまったために、買い込んだ大事な日々の糧である生鮮食料品の食材がみるみる腐っていくのを観るのは苦痛です。改めて冷蔵庫は「文明の利器」 "Modern Conveniences" であり、当たり前にその恩恵に預かっていたのを痛感させられます。

早急に冷蔵庫の買い換えが必要になったのですが、ふと数年前に何気なく「野菜室に今何の野菜がストックされているのか?」や「賞味期限が近ついている納豆がないのか?」などの食材情報を冷蔵庫が教えてくれたらいいのになぁと妄想していたのを思い出しました。

SIMカードが挿せてスーパーで買い物をする時にスマフォで野菜室に何が入っているのか教えて欲しいものですので、早くキッチンにもIoTが来て欲しいと願っております。

IoT(Internet of Things)となると可搬型のハンドヘルドデバイスに注目されがちなように想われますが、お家の様々な機器と繋がると結構嬉しいことになりそうな気がします。

文化住宅に必要なテレビ、洗濯機、冷蔵庫などは三種の神器と呼ばれた時代もありました。現在は安価な海外メーカー登場で国産メーカーは苦戦している様子ですが、これら白物家電がインターネットと繋がることで新たな価値を発見し復興を果たして欲しいものです。

例えば、電気ポットが田舎で一人暮らしされている親族の安否確認のメールを送ってくれるサービスがちょっと前にニュースで取り上げられていました。これも家電とネットワークと結びついたサービスです。これからは、もっと色々「ホーム」と「ネットワーク」融合が為されるために家電が仲介してくれるのが期待されます。家電とインターネットを再度融合し深化させるのです。

現在時点では「ホームネットワーク」と言えば家庭内LAN(Local Area Network)を指すのかもしれません。お家のパソコンをインターネットに繋いで料理のレシピを観たり内緒で洋服を買ったりしていることでしょう。

以前には「ネットワーク・オーディオ」というムーブメントがメーカー主導で行われて家にあるオーディオ機器がネットワークに繋がって操作できるというのを模索する行為が散見されました。これはApple iPodの登場により、日常で音楽を聴くというスタイルそのものが一変してしまいました。自分の持っている音楽丸ごと全部を持ち出して屋外でも自由に楽しめるようになったからです。現在では、ソニーのTVチューナーを内蔵した「ナスネ」"nasne" はテレビ録画した番組をネット回線経由でスマフォ視聴可能といった優れものがあるそうです。すごく便利なのだそうで後輩(直人)にオススメされております。

これら先には、すでにS.F.めいたものも登場しており「アマゾン・エコー」 "Amazon Echo" は、音声認識で会話ができる筒状(円筒)のAIデバイスです。デザインもさながらそこには未来があります。これはApple Siri やGoogle Androidに搭載されている音声認識技術をしたAmazon版の応用例なのでしょう。アマゾンに負けじとグーグルからは「グーグル・ホーム」"Google Home" が発表されました。こちらはパーソナル・アシスタントを謳っており同じように音声認識で音楽を鳴らしたり、照明を点けたりの家庭内の機器操作を支援してくれるものです。きっと今後アップル(Apple)からも何かしらの新種デバイスが登場してくることでしょう。

S.F.のような未来を具現化しているこれら予兆を目の当たりにするとこれまで何度も頓挫したホームネットワーク(Home Network)が本来の意味と目的でやっと実現するがのでしょうし、普及と浸透までもが間近かもしれないと期待したいと想います。筆者が、欲しい機能は「今、何が入っているのか?」なのですが、そのうち擬人化された「冷蔵庫さん」が教えてくれるのも遠い日のことではないでしょう。いつか来るであろう「冷蔵庫さん」には名前を付けて差し上げようと想いを馳せます。

数年前ニューカマーとして登場してきた DevOps(デブオプス)だけでなく IoT(Internet of Things)やマイクロサービス (Microservices) といったアンブレラ・ターム(Umbrella Term, 造語)がバズワード (Buzzword) ではなくなることによって、果たしてどんな近未来が待ち受けているのか楽しみです。

導入部でご紹介した「ベビーメタル」(BABYMETAL)についてですが、アイドル・グループからの派生(さくら学院重音部)として発足した少女達が成長を遂げて背後(バック・バンド)として百戦錬磨のメンバーを招集し重金属音が轟く演奏をバックにアイドル三人組がポップソングを歌いながらダンスするというヘヴィメタル・アイドルが「ベビーメタル」(BABYMETAL)です。

結成当初は、メタルファンの一部からは全力で否定されていたこともあった少女達(当時小学生)ですが、粛々と度胸と覚悟を蓄えた成長を著しいBABYMETALが錚々たるバンドを抑えて堂々の一位に輝いたのです。この結果を持って彼女たちを認めざるを得ない事でしょう。勿論、周囲の反応に押されて背後で楽曲をプロデュースしているブレインたちが本腰を入れたのでしょうし、バックを務める「神バンド」のメンバーに兵(つわもの)を終結させてことも大きな手柄です。神バンドの中心的人物であるベースの棒手大輔氏は筆者と同郷(北海道旭川市)ということらしいので思い入れもあり、これからも守護神として彼女たちの背後を護って欲しいと願わずにはいられません。

まだあどけない三人の女の子だった彼女達が凛々しく可憐な少女に成長していく物語は、とてつもなく伸び代を感じさせるのです。誕生前夜から戦士なるまでを描いたにラウドネス (LOUDNESS) の初期四部作のアルバムジャケットに准える(なぞらえる)のであれば、まだ二枚目(DEVIL SOLDIER ~戦慄の奇蹟~)なのですから、これからのメタモルフォーゼ(魔界典章)を経て完全体(DISILLUSION ~撃剣霊化~)となるのを将来に期待できることでしょう。

彼女たちの楽曲で英UK (US) iTunes Metal Chartで1位に輝いた "KARATE"(カラテ)のプロモーション・ビデオ (PV) では、荘厳なSE (Sound Effect) のイントロ後に曲が始まり、速い間隔で小気味よくリズミカルに床を叩きつけるように乾いた硬質のパーカッションに続いて間欠的なリズム上で不安を掻き立てるような複数低音弦を束ねたダウン・チョーキングの淀んだ重低音リフが刻まれると同時に、怠惰なリフの重低音に合わせて三人揃って中段部位へのオリジナル正拳突きを反復するダンスを披露します。そして四小節ごとに高速バスドラによる連打と頭頂部から突き抜ける高音ハイパー・ハーモニクス・チョーキングの電子音がインサートされて彼女達の「気」が昇天します。すかさず連打で畳み込むドラミングが繰り返されると「セイヤ、セ、セ、セ、セイヤ」の掛け声と共にテンポ良く本編に入ります。「エモい」(エモーション "emotion" を形容詞化した造語)リフです。押忍。

楽曲の中間部では、ロック全般で慢性的に行われるギターソロではなくポストロック "Post-Rock" のような「間」を作り、そのタイミングでビデオ映像では空手と功夫(カンフー)もモチーフとしたダンスから舞台演劇へと転調(場面転換)を挟んだストーリー性を想像させるスパイスが効いています。メタルの曲では珍しい電子楽器の打ち込みで編曲されていることも新世代メタルたる特徴でしょう。

そして曲の中核とあるメッセージには、最大の敵は奥底深くに潜んでいるもう一人の弱い自分であり、彼(彼女)から目をそらさずに真正面に対峙して活路を見つけ出すのだ、という声援がビデオでは物語として確かに表現されています。

ところで、冷蔵庫が壊れてしまったお話をしましたが、実はその数日前に筆者の住まいのお風呂の排水管が詰まって水が流れなくなってしまいました。排水できないので、水を流してしまうと排水溝から溢れてきてしまいます。シャワーはもちろん、歯磨きもできなくなってしまいました。改めて当たり前に利用している「インフラ」"Infrastructure" が重要であることを痛感させられました。日常している生活の行為は当たり前ではないのです。

冷蔵庫が壊れ野菜が腐り、排水管が詰まって水が流れなくなりました。筆者には、たったそれだけでも相当な不便さとストレスを感じましたが、東北震災や熊本地震の被害に見舞われた被災者の方々の心中を察すると如何許り(いかばかり)なのかと想像に違わない圧迫感を抱かれておられることなのでしょう。

住み慣れた場所を離れることを余儀なくされ、家財を失い不自由で窮屈な生活を強いられている方々の苦痛が癒されるように少しでも早く解消されることをお祈りしています。

BABYMETALの曲 "KARATE"(空手)の歌詞の中で筆者の琴線に触れたフレーズがあります。

「押忍!心折られても
 押忍!立ち向かって行こうぜ」

"KARATE"(カラテ)は応援歌なのです。喩え挫けて膝が折れたとしても、立ち上がりましょう。

「上を向いて歩こう」"SUKIYAKI" を聴いて涙を拭いたら、空を見上げることにしましょう。

次回もお楽しみに。

 


 

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