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ティム・リンスカム(ティモシー・リロイ・リンスカム、Timothy LeRoy Lincecum)は、サンフランシスコ・ジャイアンツ(San Francisco Giants, SF)のピッチャーです。
2007年にプロ初登板してデビューを飾りました。デビューから傑出した活躍で2年目の2008年と翌年2009年と連続でサイ・ヤング賞(Cy Young Award)を二度受賞しています。彼は大リーグの選手としてはさほど上背も無く中肉中背の体格ながらも、投球フォームは振りかぶって体躯をダイナミックにしならせた下半身を身長より大きくストライドをして全身の力を白球に全て伝導するかの如く投げ込むもので、そこから放たれたボールは正に剛速球であります。
その気合の入った剛速球に打者が気合負けするかのように奪三振の山を築くのが彼のプレースタイルです。センターに設置されたカメラから中継される映像では、投球フォームから豪快にボールを投げ込み打者のバットが空を切りキャッチャーミットに吸い込まれるのと同時に、リンスカムが投球後にベースボールキャップからはみ出た伸びた後ろ髪をなびかせて脚を大きく回して着地する姿が印象的でありました。そして彼の背番号55は「ゴジラ」こと松井秀喜選手と同じであり直ぐにも記憶に定着されます。
筆者の個人的な趣向ではありますが、球団ではなくピッチャーとして、その独自の信念と全身全霊で持ちうる魂を表現する投手といえば、「炎のストッパー」こと津田恒実選手(広島東洋カープ)や「トルネード投法」の野茂英雄選手(近鉄バファローズ、ロサンゼルス・ドジャース、他)が特別な選手として挙げられます。そしてリンスカムのあの豪快なフォームから投げ込む勇姿に彼等と同じ魂の息吹を感じていたのです。
休日の朝に何の気なしにつけたテレビで米国メジャーリーグの試合中継が放送されていました。
サンフランシスコ・ジャイアンツとサンディエゴ・パドレス(San Diego Padres、SD)の試合でパドレスのホームゲーム、ペトコ・パークでの一戦です。
この試合中継を眺めていて最初は誰が投げているのか気がつきませんでしたが、よく目を凝らすとそこで登板していたのがリンスカムでした。背番号55が小さく見えます。
あのダイナミックな投球フォームは気のせいか小ぢんまりとまとまっているように感じられ、投げるボールも唸りを上げるストレートとは違い、大きく縦に変化するカーブといった変化球主体にコントロールして投げていたのです。
筆者は知りませんでしたが、中継のアナウンサーの解説ではリンスカムは近年スランプに悩まされているのだそうです。ボールの球速が失われ当初は唸りを上げていた剛速球が無くなったことで、機軸となる球種がなくなり投球の組み立てに苦しんでいるのだそうです。加えてプライベートに問題があったようで、周囲のファンからも多くの叱責を受けたのでしょう。
精神的にも苦難の時期を過ごしたと想像されます。
中継でベンチが映し出された時のリンスカムの顔は以前のワイルドさは影を潜め、まるでウォール街のサラリーマンのような小奇麗な風貌をしていました。
サッカー日本代表、本田圭佑選手のインタビューでのコメントが脳裏を過ぎります。「どうやって自立した選手になって『個』を高めていくことができるのか。組織力は当たり前、最後には個の力で試合が決することになるのだ。」と。
野球は団体競技ですがシステマティックに攻撃/守備が明確に分かれており、また個々の役割分担が明確な競技です。その中でも投手は一人(個)で試合の骨組みを作るという重責を担っています。投手が延々と打ち込まれれば相手の攻撃も永遠に続き試合が成立しないのですから。しかしサッカーは時間を区切った団体競技で攻撃/守備が瞬時に変化し、個々の役割を持ちつつも同じフィールドの上にいる選手が縦横無尽に走り回り、選手の誰がゴールを蹴り込んでも点を得ることが出来るのです。役割分担という観点では、サッカーの方が柔軟な競技であり、より組織力を求められることは間違いないでしょう。
だからこそ局所的に相手に対峙するのは『個と個』としての一対一での戦いとなるため、最終的には個の力を増強しなければ全体の力の向上は成し得ないという理屈でありましょう。
最後に対峙するのは「個であり、自分自身である」というのは、筆者も以前から常々思うところであります。エンジニアを取り巻く様々な業務の形態の中で時には野球のスタイルでの攻防でもありましょうし、時にはサッカーの形式で行う場合もあるでしょう、ラグビーなど総力戦の場合もあります。
本田圭佑選手の発言は、その何れのスタイルでも当てはまるのであろうと考えます。
しかも、こうもきっぱり公の場でしかも仲間達の前で言い切るのは強い信念を持っているからに違いありません。決してエゴではなく仲間と一緒に自分も成長するのだという強い想いから仲間であるチームメイトの一人ひとりを鼓舞し、そして自戒の念を込めてというよりは彼が自分自身を奮い立たせる更なる決意表明としてしての発言なのでしょう。そして有限実行を目指す、本当にメンタリティが強い方なのだと感心しきりです。精神力が弱い筆者は彼のメンタリティを少し分けて貰いたいと思ってしまう程です。
ところでリンスカムの話ですが、テレビ観戦していたその試合でノーヒットノーランを達成していました。一流はやはり一流です。彼が今持てる力量を駆使して得た結果であり流石です。ですが、この快挙も幾度と無く、三塁手(サンドバル)と右翼手(ペンス)のファインプレーに助けられたものです。
偉業達成に仲間の存在はやはり欠かせないです。一生懸命に投げるリンスカムを仲間が応援してくれたのです。ノーヒットノーランはリンスカム自身も人生初だそうで、最後のバッターを外野フライに打ち取ると、駆け寄ったキャッチャーに後ろから抱え上げられたリンスカムは、はにかむような笑顔がこぼれて喜びを隠しきれない様子でした。その奥ゆかしい笑顔に彼の少年のような素直さが垣間見られたように思います。
次回もお楽しみに。
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