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第19回 デスクトップの仮想化 (志茂吉建) 2013年6月

Windows XPのサポート終了

 Windows XPのサポートが2014/4で終了するのはすでにお聞き及びだと思います。個人で使用する場合はWindows 7やWindows 8などにアップグレードするなどの対策で、なんとか対応できると思います。しかし、企業で利用しているのであればWindows XPのデスクトップをすべて入れ替える必要がありますので簡単な話ではありません。システム管理者の立場で考えるとデスクトップの入れ替えはかなり大変な話になります。

 では、どのような技術を利用する大量のデスクトップの運用管理、アップグレードなどの負担を減らすことができるのでしょうか。その答えの一つは、デスクトップの仮想化技術を利用することです。Windows XPからの移行先の一つとしてデスクトップ仮想化を検討してみてはいかがでしょうか。

仮想デスクトップのメリット

 仮想デスクトップを利用するメリットがあるのはシステム管理者だけではありません。利用者や経営者に対してもメリットがあります。まず、利用者からのメリットは、いつでも、どこでも自分専用のデスクトップを利用できるということです。仮想デスクトップは仮想化技術を利用してデスクトップを集中管理します。利用者はシンクライアント端末からネットワークを経由して仮想デスクトップに接続して利用することになります。シンクライアント端末からネットワークさえつながればいつでも、どこからでもデスクトップを利用できるようになるのです。

 経営者にとってのメリットもあります。まず、情報漏えい対策ができることが考えられます。いつでもどこでもパソコンを利用したい場合は、今までであればノートパソコンを社外に持ちだして利用していたと思います。当然ノートパソコンには、機密情報を含む何らかの情報が保存されているのだと思います。もちろん、ハードディスクの暗号化などの対策を行いパソコンをなくした時の対策を実施することは可能ではないかと思いますが、データが紛失することには変わりありません。仮想デスクトップ環境では、データは集中管理のサーバ側にあるので、ノートパソコンタイプのシンクライアントが紛失しても情報が物理的に紛失するわけではありません。シンクライアントと仮想デスクトップの間の通信はSSLで暗号化されていますので、公衆無線LANなどを利用して接続してもデータの漏洩の心配はありません。

 また、最近ではワークライフバランスが考慮され在宅勤務など多様な勤務形態が提唱されています。仮想デスクトップ環境は、在宅勤務を実現するためのツールの一つとなります。特に、育児中のご夫婦で共働きなどのケースに対しては効果があると考えられます。その他、大規模自然災害発生時の事業継続性 計画などを検討する上での要素ともなります。いつでもどこでもデスクトップを利用できるので、災害で通勤が困難な場合も企業として業務を継続して企業としての使命を果たすことができます。

仮想デスクトップのデメリット

 一方メリットがあればデメリットがあるのも事実です。先ほど仮想デスクトップは集中管理するとお話しましたが、これはメリットでもあり、デメリットともなります。通常のWindows XPなどの場合は、障害発生時の影響範囲はそのデスクトップを利用しているユーザのみの場合が多いと思いますが、仮想デスクトップの場合は他のユーザに何らかの影響を与える可能性を排除できません。また、CPUやメモリなども共有するのでパフォーマンスに関しても注意が必要です。特に、ハードディスクは多くの仮想デスクトップから共有する構成となるので、トラブル発生時の影響範囲をしっかりと検討する必要があります。

 利用者にとっては、ネットワークが繋がらなければ仮想デスクトップを利用できないというデメリットがあります。社内LANなどは整備され品質も向上していると思いますので、障害発生時のトラブルはある程度抑えられるのではないかと思います。一方、社外からのネットワークアクセスについては、都市部ではモバイル通信網が整備されているのである程度確保できるとおもいますが、地方に行くと電波は届くけどスピードが遅いなどの問題に遭遇する可能性はあります。労務面で考えると、いつでもどこでも仕事が出来るというのもデメリットになる可能性があります。自宅に帰ってからでも仕事ができるので、残業の抑制という効果はありますが、労働時間を把握することが難しくなる危険性はあるとおもいます。

 経営者にとってのデメリットも検討すべきでしょう。情報漏えいなどに関してはメリットがありますが、IT投資という面では検討が必要だと思います。ハードウェア自体がコモディティかして価格も安定してきていますので、仮想デスクトップに対する初期投資はある程度抑えることができると思います。しかし、その後の運用をどのように考えるかでTCOは大きく変わってくる可能性があります。大きく分けると、自社運用かDaaS(Desktop as a Service)などの外部サービスの利用を考慮してTCOの最適化を考慮する必要があります。

まとめ

 仮想化のメリット、デメリットを考慮して来ましたが、まとめとしては、仮想デスクトップ導入のメリットのほうが大きいのではないかと考えています。Windows XPのサポート終了を契機に、みなさんもデスクトップの運用形態を見なおしてみてはいかがでしょうか。

 


 

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