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前回に続いて、「OpenStack Summit Tokyo/2015」に関連した話題として、OpenStackのインストールツールの最新情報をお伝えします。最近は、OpenStackのインストールを自動化するさまざまなツールが登場するようになりましたが、「Automated OpenStack Deployment: A Comparison」というセッションでは、このような各種ツールの比較が行われていました。会場は立ち見で大混雑するほどの盛況ぶりで、「インストールツールだけでこれほど盛り上がるのか?!」と新鮮な驚きを感じました。そこで、今回のコラムでは、Red Hatが提供する製品版のOpenStackディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform (RHEL-OSP)」、および、そのアップストリーム版であるRDOの最新インストールツールを紹介したいと思います。
RHEL-OSP/RDOでは、伝統的に、packstackという簡易的なインストーラーが提供されてきました。設定ファイル(アンサーファイル)を編集して、packstackコマンドを実行するだけで、ほぼ確実に正しく動作する環境を構築できるため、packstackの愛好者は相当に多いようです。ただし、packstackでは、コントローラーノードのクラスター構成を構築することができません。そのため、RHEL-OSPでは、Kiloベースのバージョン7から、「OSP director」という新たなインストーラーが追加で提供されるようになりました。RDOでは、「RDO Manager」という名称で開発が進められています(*1)。
これは、OpenStack TripleO (OpenStack-On-OpenStack)というプロジェクトの成果を取り込んだもので、OpenStackのインストールにOpenStackそのものを使用するという斬新な(?)仕組みになっています。図1のように、OSP directorをインストールしたサーバー上では、1台構成のOpenStackコントローラーが動作しており、OpenStack Ironicによるベアメタルプロビジョニングの機能が利用できるようになっています。インストール対象のサーバー群に対して、ベアメタルプロビジョニング機能でOSをインストールした後、Puppetを利用して、クラスター構成のコントローラー環境を自動構築していきます。
図1 OSP directorによる環境構築の仕組み
図1に示したように、OSP director内部のOpenStack環境は、「Undercloud(下側のクラウド)」と呼ばれており、一方、Undercloudによって構築されるOpenStack環境(エンドユーザーが実際に利用するOpenStack環境)は、「Overcloud(上側のクラウド)」と呼ばれます。Undercloudから見ると、Overcloudを構成するそれぞれの物理サーバーは、ベアメタルインスタンスとして管理されており、たとえば、次のようにnovaコマンドでステータスを確認することができます。
[stack@undercloud ~]$ nova list --fields name,status,networks +--------------------------------------+--------------+--------+----------------------+ | ID | Name | Status | Networks | +--------------------------------------+--------------+--------+----------------------+ | 0bbccf6f-4159-431c-a9e3-a24f83203cab | compute-0 | ACTIVE | ctlplane=172.16.0.67 | | 851f5e70-5dce-4bdd-a5dc-bf434199a6ac | compute-1 | ACTIVE | ctlplane=172.16.0.66 | | 0b48a9ee-dc25-4bd1-b89f-5786c62d915a | controller-0 | ACTIVE | ctlplane=172.16.0.65 | +--------------------------------------+--------------+--------+----------------------+
「nova start/stop/reboot」などのコマンドでそれぞれのサーバーを起動/停止/再起動するなどの操作も可能です。その気になれば、Overcloudとして構築したサーバーを停止/破棄することもできてしまいますので、Undercloudでの操作には細心の注意が必要です。
また、上記の出力例では、コントローラーが1台(controller-0)とコンピュートノードが2台(compute-0/1)という最小構成になっていますが、先に触れたように複数のコントローラーによるクラスター構成の構築も可能で、3台のコントローラーによるクラスター構成がRHEL-OSP7の推奨構成になっています。Overcloudを構築する一連の処理は、オーケストレーションツールであるOpenStack Heatによって自動化されており、バックエンドストレージとして使用するCephのストレージ環境も自動構築することが可能です。TripleOのアーキテクチャーガイドには、Undercloudで稼働するOpenStackのコンポーネント、および、Overcloudに自動構築可能なコンポーネントが図示されていますので、そちらも参考にするとよいでしょう(*2)。
今回は、OpenStackのコントローラーノードをクラスター構成でインストールするツールとして、RHEL-OSP7から提供が開始されたOSP directorを紹介しました。コントローラーをクラスター化する目的は、もちろん、コントローラーの冗長化、および、負荷分散を実現するためですが、実は、RHEL-OSP7では、さらにコンピュートノードを冗長化する設定も可能になっています。こちらはまだ手作業での設定が必要なため、実際の設定にはすこし手間がかかりますが、内部的には、pacemaker-remoteなど、興味深い仕組みが利用されています。次回は、RHEL-OSP7でコンピュートノードを冗長化する仕組みを解説したいと思います。
*1 「RDO-Manager」- RDO Managerの公式Webサイト
*2 「TripleO Architecture」- TripleOのアーキテクチャーガイド
++ CTC教育サービスから一言 ++
このコラムでLinuxや周辺技術の技術概要や面白さが理解できたのではないかと思います。興味と面白さを仕事に変えるには、チューニングやトラブルシューティングの方法を実機を使用して多角的に学ぶことが有効であると考えます。CTC教育サービスでは、Linuxに関する実践力を鍛えられるコースを多数提供しています。興味がある方は以下のページもご覧ください。
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