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第28回 「SDN Japan 2013」に見るSDN界隈の動向 (中井悦司) 2013年9月

はじめに

 先週末は「SDN Japan 2013」というイベントに参加してきました。筆者は「SDNを作る側と使う側」というテーマのパネルディスカッションに登壇して、「OpenStackから見たSDN」という観点でお話をさせていただきました。各パネラーの発表資料は、こちらのサイトで公開される予定とのことです。筆者の発表資料については、一足先にSlideShareでも公開していますので、ご参照ください。
 SDNがメインテーマのイベントに参加するのは、今回が初めてでしたので、「世の中でSDNに関わる人たちが、SDNをどのように捉えているのか」という事を確認する意味で興味深い経験となりました。今回は、公開されている講演資料をピックアップして、「SDN界隈で登場する用語や考え方」を筆者なりに整理してみたいと思います。

SDNを実現するアーキテクチャ

 前々回、「SDNの利用目的」という観点で、「SDNの定義」について考えてみました。それでは、「SDNを実現する方法」の現状はどのようになっているのでしょうか? SDNのアーキテクチャ、すなわち、SDNを実現する仕組みの「大まかな枠組み」については、講演者の方々は共通の理解を持っているようでした。公開資料の中では、(*1)の3ページの図がわかりやすいと思います(図1)。

fig01

図1 イクシアコミュニケーションズ株式会社の発表資料より引用

 前々回のコラムでは、SDNの利用目的の1つとして、ネットワーク環境をソフトウェアで集中管理するという話をしました。この図の「Control Layer」という部分は、ちょうど、集中管理を行う管理ソフトウェアに相当します。管理ソフトウェアは、OpenFlowなどのプロトコルで「Infrastructure Layer」にあるネットワーク機器を制御します。
 図の中にある「コントロールプレーン」「データプレーン」という用語もまた、会場ではよく耳にしました。「コントロールプレーン」とは、要するに、管理ソフトウェアとネットワーク機器が通信するためのネットワーク経路のことです。ネットワーク機器が本来運ぶべきデータの通信経路である「データプレーン」とは別に、独立した管理用のネットワーク経路が必要ということを意味します。
 さらに、この図にはありませんが「ノースバウンドAPI」「サウスバウンドAPI」という用語があります。OpenFlowのように、管理ソフトウェアからネットワーク機器を操作するAPIがサウスバウンドAPIにあたります。一方、図の「Application Layer」には、この管理ソフトウェアを利用して、ネットワークを制御するさまざまなアプリケーションがあります。OpenStackが外部のSDN製品に依頼して、仮想ネットワークを構成するような例を考えてください。この場合、OpenStackからSDN製品に「依頼を出す」APIがノースバウンドAPIです。
 ちなみに、この図は、SDN関連技術の標準化を目指した「ONF(Open Networking Foundation)」という団体のホワイトペーパーが引用元となっています。先に紹介した用語やアーキテクチャは、この団体が中心となって策定が進められているようです。ONFでは、さらに、OpenFlowの仕様策定も行っているそうです。

NFV(Network Function Virtualization)とは?

 本イベントの講演プログラムをよく見ると、「SDN」と並んで、「Network Function Virtualization」、あるいは、「NFV」という言葉が目につきます。NFVというのは、さまざまなネットワーク機器の機能を仮想マシン上のソフトウェアとして提供しようという考え方です。
 前回、仮想マシン上でルータ機能を提供するという話をしましたが、これをルータ以外のネットワーク機器まで広げる発想と言えるでしょう。公開資料(*2)の5ページを見ると、Linux KVM上で複数の仮想マシンが稼働する、Linuxエンジニアにはおなじみの絵があります。これら仮想マシンの中でネットワーク機能を提供するソフトウェアが稼働するということです。仮想マシンを立ち上げるだけで、すぐに新たなネットワーク機器を追加できますので、必要に応じてネットワーク機器を自由に組み替えるような使い方を想定しているようです。
 ちなみに、(*2)の6ページには、「仮想サービスのチェーン」という言葉がありますが、この他にも何社かのネットワーク機器ベンダーの方が「サービスチェイニング」という言葉を使っていました。利用目的に合わせて、ネットワーク機器の機能をつなげていくことをカッコよく表現した言葉のようですが、ネットワークの稼働状況をモニタリングしながら、必要なネットワーク機器を自動的に立ち上げて接続していく、そんな未来像が込められているようにも感じられます。ネットワーク機器の世界でも「自動化」の夢が広がっているようですね。

次回予告

 SDNの話題がしばらく続きました。次回は、そろそろ新しいテーマへと進みたいと思います。Linuxエンジニアなら、きっとどこかで耳にして気になっている、あの新機能についてお話します。

参考資料

*1)「テスターベンダーからみたSDN/OpenFlowテストの必要性について(PDF)」イクシアコミュニケーションズ株式会社

*2)「ネットワーク機能の仮想化とサービスチェイニング(PDF)」ジュニパーネットワークス株式会社

 

++ CTC教育サービスから一言 ++
このコラムでLinuxや周辺技術の技術概要や面白さが理解できたのではないかと思います。興味と面白さを仕事に変えるには、チューニングやトラブルシューティングの方法を実機を使用して多角的に学ぶことが有効であると考えます。CTC教育サービスでは、Linuxに関する実践力を鍛えられるコースを多数提供しています。興味がある方は以下のページもご覧ください。
 CTC教育サービス Linuxのページ
 http://www.school.ctc-g.co.jp/linux/
 

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