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前回の予告通り、今回は「RDO」を紹介しましょう。このキーワードでWebを検索すると、いくつか関連するニュース記事が見つかりますが、RDOの正しい姿を知るには、公式Webサイトを見ていただくのがベストです。冒頭の紹介文には、次のように書かれています。
"RDO is a community of people using and deploying OpenStack on Red Hat and Red Hat-based platforms."
翻訳すると次のようになります。
「RDOはRed Hat、もしくは、Red HatベースのプラットフォームでOpenStackを構築・利用する人々のコミュニティです。」
そう、RDOはコミュニティだったのです。「RDOは、Red HatのOpenStackディストリビューション」なんて言っている人は誰ですか?! ―― というのは冗談ですが、今回は、コミュニティとしてのRDOの活動について、少し詳しく解説しておきたいと思います。
OpenStackについては、これまでに何度か紹介してきました。米ラックスペースホスティング社と米航空宇宙局(NASA)が公開したオープンソースを出発点とする、オープンソースによるクラウド基盤(IaaS)ソフトウエアの開発プロジェクトです。「OpenStack」は、このプロジェクトで開発されるソフトウェアであると同時に、開発コミュニティの名前でもあります。このコミュニティの目的は、OpenStackの新バージョンを生み出して、OpenStackを進化させていくことです。
その一方で、新しく開発されたOpenStackをサーバにインストールして、プライベート、あるいは、パブリックなクラウド環境を構築しようという多数のユーザがいます。先日、Portlandで開催されたOpenStack Summit 2013でも「アメリカ国家安全保障局」「Broomberg」「BestBuy」「CERN」などさまざまな分野でのユーザ事例が紹介されていました(*1)。
しかしながら、OpenStackを利用する上では、開発とはまた別のスキルやノウハウが必要です。仮想化、ネットワーク、ストレージなど幅広いLinuxの知識が必須となります。そこで、Red Hatは、OpenStackの利用者を支援するためのコミュニティとしてRDOを立ち上げました。本コミュニティの活動の1つとして、開発コミュニティが生み出した最新のソースコードをRPM形式にパッケージ化して提供しています。
インターネット上のリポジトリで公開されるRPMパッケージを利用することで、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)、もしくは、FedoraなどのLinuxディストリビューションに、簡単にOpenStackをインストールすることができます。現在提供されているパッケージは、最新版のGrizzlyがベースとなっています。
このコミュニティが提供する、RPMパッケージ形式のOpenStackもまた、「RDO」と呼ばれます。つまり、RDOはコミュニティの名前であり、同時にこのコミュニティが提供するソフトウェアパッケージのことでもあるわけです。
先ほどのRDOのWebサイトを見ると、その他にもコミュニティとしてのさまざまな活動が行われていることが分かります。1つは、ソフトウェアパッケージとしてのRDOの導入・設定を自動化するツール「Packstack」の提供です。現在公開されているドキュメントには、1台のサーバにすべてのコンポーネントを導入する「デモ環境」の構築方法が記載されていますが、今後は、より本格的な複数サーバー構成にも対応する予定もあるようです。
Packstackは内部でPuppetを利用しており、前述のデモ環境の構築であれば、RHEL6.4、もしくは、Fedora18をインストールしたサーバー上で、たった3つのコマンドを実行すれば完了します。驚くほど簡単に、OpenStackの環境構築ができてしまいます。これまで環境構築に苦労していたみなさんも、これからは使い慣れたRHELの上で、安心してOpenStackを利用できるようになるでしょう。
そしてまた、RDOのWebサイトでは、誰でも自由に質問ができるフォーラムが運営されています。Red HatのOpenStack開発メンバからの回答が得られる貴重なフォーラムです。RDO/Packstackの利用に関する疑問は、ぜひこのフォーラムを活用して解決していってください。もちろん、ユーザ同士の情報交換の場としても有効活用できるでしょう。
ちなみに「RDOとは一体何の略なんだろう?」と思っている方はいるでしょうか? 公式WebサイトのFAQには、なんと、「It doesn't really stand for anything.(まったく何も意味していません)」と書かれています。一部の記事には、「Red Hat Distribution of OpenStack」と書かれているようですが、そういうわけではないようです。もちろん、覚え方としては、これが分かりやすくてよさそうですね。
さて、前回紹介したLinuxCon Japan 2013の開催も、ついに来週となりました。次回は、LinuxConから何か面白い話題をお届けできればと思います。
*1)「OpenStack Summit Portland 2013 Session Videos」
OpenStack Summitでの主要セッションのビデオ録画が公開されており、多数のユーザ事例のセッションが含まれています。
++ CTC教育サービスから一言 ++
このコラムでLinuxや周辺技術の技術概要や面白さが理解できたのではないかと思います。興味と面白さを仕事に変えるには、チューニングやトラブルシューティングの方法を実機を使用して多角的に学ぶことが有効であると考えます。CTC教育サービスでは、Linuxに関する実践力を鍛えられるコースを多数提供しています。興味がある方は以下のページもご覧ください。
CTC教育サービス Linuxのページ
http://www.school.ctc-g.co.jp/linux/
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