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コラム

クラウドデータレイクの魅力

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第1回 データレイクってどんなもの? (平野 幸次) 2024年9月

本コラムでは、データ分析や機械学習の実現するためのデータ基盤として注目されている「クラウドデータレイク」の魅力を数回にわたって紹介します。第1回目では、クラウドが付かない「データレイク(Data Lake)」とはどんなものなのかを説明します。

まず、データレイクの活用例であるBI (ビジネス・インテリジェンス)を見ていきましょう。

BIでデータドリブンな経営を実現
fig01

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の事例として、BIが注目されています。BIとは、企業が蓄積している様々なデータを分析・活用し、経営や各部門の意思決定に役立てる手法です。

例えば、作業服大手のワークマンでは、2012年からExcel 使ったデータ活用を社員一人一人が実施し、販売実績や業務効率の向上に役立てています。その結果、14期連続で売上高が過去最高を更新するという大躍進をとげました。まさに「BIを活用したデータドリブンな経営戦略」の成功例です。
そして、効果的なBIを実現するためには適切なデータ分析基盤が必要です。

データ分析基盤の構造
fig02

データ分析基盤は、3つの要素で構成されています。

  • データレイク:データを保存
  • データウェアハウス:データを加工
  • データマート:データを陳列

それぞれの役割を説明します。

データレイクでは、様々なソースから収集した多様なデータを"未加工のまま"保存します。雨や川の水を貯めておく湖のように、様々な水源(データソース)から流れ込んでくる多様なデータを蓄積する「データの貯蔵庫(湖)」がデータレイクです。データウェアハウスでは、データレイクの未加工のデータを、分析できるように加工(=正規化)し保存します。ウェアハウスとは倉庫のことです。素材や部品を加工し箱につめ倉庫内の棚に分類して格納しておくように、データを加工して分析しやすいように正規化し保存しておくのがデータウェアハウスの役割です。

最後のデータマートでは、データウェアハウスのデータを特定の目的や用途ごとに整理し、分析しやすいように個別に分けて保存します。ここで言うマートとは、八百屋や魚屋といったニーズごとの小売店のことです。料理を作るために巨大な倉庫に赴き、目的の食材をイチから探し出すのは大変です。なので、キャベツが欲しいなら八百屋に行く、魚屋に行けば三枚おろしのサンマが手に入る、といった具合に小売店が重宝されます。それと同じように、データマートで目的や用途ごとにデータを事前に整理・加工し可視化しておくことで、データ分析を素早く行えるようになります。

データレイクの必要性

データ分析基盤でデータレイクが必要とされる理由は2つあります。

1) データ多様性への対応

データには、構造化データと非構造化データの2種類があります。

  • 構造化データ :一定の形式で整理され、それぞれ関連性をもったデータ
  • 非構造化データ:形式がバラバラで、データ間の関連性が薄いデータ
fig03

データレイクでは、構造化データと非構造化データの両方を一元的に保存します。データウェアハウスでは、基本的に分析用に 整理された構造化データのみ保存し、多様なデータは保存できません。
fig04 「ビッグデータ」という言葉が登場して10年以上たちますが、IoT機器の普及やソーシャルメディアの発展にともない、データ分析 の対象となるデータは、ますます多種多様になっています。

例えば、スマートウォッチの活動データを基に運動量や睡眠時間を分析したり、Instagram のトレンドやいいね数を指標にエン ゲージメント率の算出したり等、データソースの多様化やその分析の需要は、拡大し続けています。
それらの必要とされるあらゆる多様なデータを、ファイル形式やフォーマットを問わず、一元的に格納・蓄積するのがデータレイクです。

2) 未加工の「生データ」を保存
fig05

データレイクでは、多様なデータソースから集めた膨大な生データを加工せず、「オリジナルな形式のまま保存」しています。 そのため、柔軟性が高くさまざまな分析や処理にデータを利用できます。
データ分析を魚の調理で例えると、

  • データレイク   :生魚をそのまま保存
  • データウェアハウス:目的ごとに魚を調理してから保存

という違いがあります。

生魚のまま保存しておけば、新たなニーズ(例:刺身を食べたい)や新しい手法(例:真空調理)が登場した際に、慌てることなく対応可能です。

それと同じように、生データをデータレイクに保存しておけば、新たなデータ分析ニーズやデータ分析手法にも柔軟に対応でき ます。

データレイクの"沼化"に注意

最後にデータレイクを扱う際の注意点を紹介します。

データレイクの対義語に「データスワンプ(Data Swamp、スワンプ=沼)」があります。

  • データレイク:水が澄んでいる湖のように、どのデータがどこにあるのかが明確で、必要なデータをすぐに取り出せる状態
  • データスワンプ:水が濁っている沼のように、どのデータがどこにあるのか不明確で、必要なデータをすぐに取り出せず、データが本当に存在するかどうかすら把握できない状態のデータレイク
fig06

前述したように、データレイクには多様な生データをそのまま保存できます。ですが、「とりあえず何でも入れておこう!」と適切な管理手法などを一切考慮せずに単にデータを保存しているだけでは、ただデータが入っているだけで取り出すことができない、価値のない「沼」になってしまいます。

データレイクを沼化させないためには、以下の2点の維持管理が必要です。

1) メタデータとデータカタログによる、データの検索性の維持

データレイクに保存する際に「それがどんなデータなのか?(=メタデータ)」も一緒に保存してください。
また、データソースや粒度、種別、形式などの属性もメタデータとして記録して適切なタグを付けて整理しておきます。
そして、メタデータを管理する「データカタログ」を導入し、

  • どのデータがどこにあるのか?
  • どのデータが最新のものなのか?

等、データを適切に整理・分類し、データをすぐに取り出せる状態を維持してください。

2) 定期的なデータクレンジングによる、データの品質・信頼性の維持

データレイクを定期的に掃除して、ゴミや泥を定期的に取り除くのがデータクレンジングです。
具体的には、

  • 半角数字と全角数字の混在の解消(128と128 → 半角の128にそろえる)
  • 商品名や企業名の表記ゆれの統一化(Microsoft とマイクロソフト、MS → マイクロソフトに統一)
  • 和暦表記を西暦表記に変更(令和6年 → 2024年に変更)

等を定期的に実施し、保存データの品質・信頼性を落とすことがないように気を付けましょう。

次回予告

 「クラウドデータレイク」を理解する前提として、まずはクラウドが付かない「データレイク」を紹介しました。 次回は「データレイクをクラウド上で構築・運用する必要性」を解説する予定です。

 

参考文献:Rukmani Gopalan (著), 丸本 健二郎 (監修), 長尾 高弘 (翻訳)(2024)
『クラウドデータレイク ―無限の可能性があるデータを無駄なく活かすアーキテクチャ設計ガイド』
オライリー・ジャパン

 


 

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